筋肉の生理学

筋肉のロックと痛みのメカニズム

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筋肉のロックは慢性痛の始まり

「拘縮」とは(Wikipediaより)

拘縮(こうしゅく)は、関節包外の軟部組織が原因で起こる関節可動域制限のことである。生理学的には活動電位の発生停止により筋が弛緩しなくなる現象。

とあります。

なんだか漢字で書かれた専門用語が多くてわかりにくいと思いますが、下線引いたところだけ注目していただければOKです。

ようするに、エイド・ステーションが扱う拘縮の定義とは、「身体の動きが制限されてますよ」と「筋肉がゆるまなくなってますよ」ってことなんです。

一般的な筋肉痛は、筋肉の代謝物質である「乳酸」などを流しだすことでラクになります。

これらは、ストレッチやマッサージで対処できる比較的軽度の痛みです。

ところが、慢性化したしつこい痛みやコリに悩んでいる方の筋肉は、ストレッチやマッサージなどで対処できる方の筋肉の状態とは異なっています。

その方たちの筋肉は、固くこわばった状態からゆるまなくなってしまっています。

またさらに、筋肉が短く縮んでしまって、血の巡りも悪くなっています。

こういった状態を筋肉が拘縮していると、言います。

「拘縮」という言葉ではイメージしにくいので、エイドステーションでは拘縮を「ロック」と言い換えています。

ココがポイント

筋肉のロック=筋拘縮

 

筋肉を守るためのしくみ

実は筋肉には、自動車のシートベルトのようなしくみがあります。

シートベルトは、ゆっくり引っ張るとするすると出てきますが、勢いよく引っ張るとロックがかかってガチンと止まります。

筋肉も同じで、勢いよく引っ張られたりするとギュッと縮むのです。

それは、筋肉に急激な負荷がかかった時に、筋肉が傷つかない(筋肉をまもる)ためのしくみです。

ガチンと止まってしまったシートベルトは、無理やり引っ張っても絶対に伸びませんよね?

それと同じように、急に引っ張られて縮んだ筋肉も、上記のような一般的な方法では元に戻ってくれません。

そして、そのように縮んだ筋肉は、放っておいてもゆるむことはなく、ロックされたシートベルトをずっと引っ張っているようなもので、慢性化してますますゆるみにくくなっていきます。

 

筋肉をまもる装置 筋紡錘

(ここからはさらに難しい話になるので、興味のある方だけ読んでいただければ結構です。)

車のシートベルトの仕組みを人の体に置きかえますと、筋肉を構成する「筋線維」に巻き付いている「筋紡錘」というものが、その役割を果たします。

少し複雑ですが、筋肉というのは「筋原繊維」が束になって「筋線維」になり、筋線維が束になって「筋束」になり、筋束が束になって筋肉になっています。 この複雑な構造のうち、筋紡錘は筋線維の所にあります。

筋紡錘の仕事

筋紡錘は、筋肉の伸び縮みを感知する装置です。

筋紡錘の働きのひとつに「筋肉をまもる」というものがあります。

どうやって筋紡錘が筋肉を護るのか、というと...

筋紡錘は「筋肉が過剰に伸ばされた」と感じたときに、脊髄に信号を送ります。

脊髄は、危険防止のために筋肉を収縮される信号を筋肉に送り、その信号を受けて筋肉は収縮します。

これを伸張反射と言います。

この反射は、脳からの信号で起こるのではなく、筋肉と脊髄の間で起こるので、「脊髄反射」という言い方もされます。

もし、この「伸張反射」が起こらないと、過剰に伸ばされた続けた筋肉は切れてしまいます。

伸張反射」は、筋肉が不意に伸ばされたときはよく働き、意識してゆっくり伸ばされたときは働きが鈍い、という特徴があります。

これはまさに、車の座席シートベルトと全く同じですね。

例えば、電車の中でコックリコックリと居眠りをしているとき、急に首がガクンと倒れそうになると、反射的に首の後ろの筋肉が収縮して反射的に頭が元に戻るという経験をしたことがある方は多いと思います。

あるいは、それこそ自動車に乗っていて急ブレーキをかけた時や追突された時、シートベルトはガチンとロックしてフロントガラスに突っ込むのを防いでくれます。

それと同じように、首の筋肉(実際は、肩や背中、衝撃の強さによっては腰の筋肉まで)が瞬間的に収縮し、首の筋肉が切れて首の骨が折れるのを防ぎます。

勤勉な筋紡錘

以上のように、筋肉が切れないよう筋肉をまもる仕事をする筋紡錘ですが、負荷の強さ、急激さ、持続時間の長さ、その他、「伸張反射」が起こった時の条件によって、収縮した筋肉がそのまま元の状態に戻らなくなることがあります。

筋線維にずっと負荷がかかり続けていると、筋紡錘が感じるわけです。

収縮し続けた筋肉は、やがて「拘縮(こうしゅく)」という状態になります。

こうしゅく【拘縮】
1. 筋肉の持続性収縮。痙縮 けいしゅく
2. 関節の動きが制限された状態。皮膚・筋肉などの関節周囲の軟部組織の収縮によって起こる。
(大辞林より引用)

シートベルトで言うと、ロックがかかったまま外せなくなってしまった状態です。

拘縮(ロック)してしまった筋肉は、揉む・叩く・押す・温める・冷やす・引っ張る(ストレッチ)・電気をあてる、等、通常行われる対処方法では、元に戻すことが非常に難しくなります。

むち打ち症の後遺症で悩んでいる方、ギックリ腰の後の慢性腰痛で悩んでいる方等が多いのも、上記のような一般的に行われる治療方法では拘縮した筋肉がもとに戻らないため、筋肉自体の血行不良や、背骨・骨盤の歪み・関節の可動不全等を引き起こしたまま、それが持続し続けるからです。

筋肉のロックによって痛みが起こるしくみ

1. 正常な筋肉の状態

2. 筋肉に無理なストレスがかかると

3. 筋紡錘の働きで筋肉が収縮

4. 拘縮した筋肉

5. 拘縮して固くなった筋肉は、
血流が悪化して酸素不足になる。

6. 酸素欠乏になった筋肉が、
酸素不足を脳に伝える。

7. 脳が痛みを感じる

筋肉が拘縮(ロック)してから痛みを感じるまでの流れを、お分かりいただけましたでしょうか?

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